某中華飯店にて「クモさん、中華はお好きですか?」
そんなユヅルの一言から始まり、電車に揺られ汽車に揺られバスに揺られてクモとユヅル二人はとある中華飯店に来ていた。
商店街の一角に佇むその飯店は、どこにでもあるようないかにもな個人経営の小規模な店だった。客が行列を成しているというわけでもない本当に平々凡々なその店は、ユヅル曰わく絶品の中華飯店だそうで。ユヅルは何時もどうやってこのような店を見つけてくるのかクモは気になって仕方ない。
「ふふ、拍子抜けしてる顔ですね」
「遠出になるからどんな店かと思えば、随分普通だな」
「世の中優れた物は思わぬ所に隠れているものです」
二人が店の中に足を踏み入れると、カウンターで新聞を読んでいた中年の従業員が慌てて立ち上がって出迎えた。思わぬ客の来訪であったらしく完全に油断していたようだった。
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