うちの褪せ人君で書いたモゴ褪02 ドン、と眼前におかれた硝子の器にモーゴットは訝しむ目を向けた。
器に山と盛られた白い綿のような物。それをこの部屋に運び込んできた褪せ人が胸を張る。
「御多忙なローデイル王に憩いの品を献上いたしたく。……なんてね。それより見て、きれいな器でしょ。マギの体格に合うやつ見つけるのは大変だったよ」
褪せ人が起居している王都の円卓城館は、一階奥に厨房がある。近頃まで使われていた形跡があり、調理器具も一通り揃っていて、煮炊きに支障ない環境が整っていた。褪せ人は戸棚を端から端まで漁って、モーゴットへ出すのに相応しい作りでそれなりに大ぶりな器を苦労して探し当てたのだった。
遠い目をして散らかり放題の厨房の惨状に思い馳せた褪せ人だったが、はっと我に返った。もたもたしていると器に盛ったものが溶けてしまう。
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