Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    筐屋は作業中

    @katamiya2

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    筐屋は作業中

    ☆quiet follow

    夜巫女と剣士の霊体に侍られてる褪せ人君が書きたかった。
    モゴ褪の解釈をこねる作業01。

    褪せ人君は大ルーン2つ手に入れて玉座に乗り込んだ。なんやかんやあって休戦協定結んで食客として王都に滞在中。

    ##ELDENRING

    うちの褪せ人君で書いたモゴ褪 視界の端を閃いた何かにモーゴットは足を止めた。
     回廊の先、黒いローブをそよ風になびかせる小柄な人影と、輪郭を霞のように青白くにじませる白い双冠を被った大柄な人影が並んでいるのが遠目に見えた。
     頭上高くそびえる黄金樹の木漏れ日が、ローブに施された金刺繍に照り返してきらめく。モーゴットの目端に映ったのはこの光だった。黄金樹の木葉と白い城壁が織りなす景観に、豪奢な金刺繍の黒いローブ姿は酷く浮いている。この王都でそんな装いをする者はひとりしかいない。
     青白い方は、さながら幼子にするように黒い方の両肩に手を添えて、ぴったりと寄り添っている。何事か話しているのか、時折黒い方へ首を傾けている。
     モーゴットは目を眇め、王都ではほとんど見ることのない霊体が白昼堂々生きた人と並んでいる姿を眺めた。
     褪せ人が多数引き連れている霊体のうち、その特徴的な双冠は遥か昔に滅んだとされる都の巫女と剣士の二人一組の霊体のはずだが、片割れの剣士の姿が見当たらない。こちらに背を向けている彼らが何をしているのかはこの距離からでは判別できなかった。
     黒いローブの肩に回る青白い腕をしばし見つめ、かすかな気まぐれに従ったモーゴットは彼らの方へ足を向ける。
     
     
     褪せ人は霊呼びの鈴を振った。涼やかな音色と共に、小さい野犬の霊体が出現する。朱い腐れに蝕まれた野犬はきょとりと二人の霊体を見上げ、間に挟まれた褪せ人にはたと気づいた。瞬間、牙をむき出して唸り声を上げる。
    「この子も駄目か」
     飛びかかられる前に鈴を再度振るい、さっさとお帰り願う。
     これまで一通り呼び出した霊体たちの反応を思い返し、褪せ人はため息をつく。
    「人型じゃなければいけると思ったんだけどなぁ」
     双冠の巫女が褪せ人の頬に手をあてる。促されるまま褪せ人は顎を上げ、耳を済ませるように目を伏せた。
    「それは……駄目だな。面倒事になる。まだ完璧に制御できるわけじゃないし…」
    「……褪せ人よ」
     その背後、つむじを見下ろす距離に立っても気付く様子がないことにモーゴットはしびれを切らした。ゆるりと顔を向けてくる巫女の絹布越しの眼差しをモーゴットは黙殺した。
     一拍置いて、褪せ人がのんびりと振り返る。その目はモーゴットを通り過ぎて遠くへ彷徨い出ている。距離を図るような間があり、瞬きをひとつすれば、ようやくモーゴットに焦点が合う。
     視力がよくないのだろう、とモーゴットは推測している。色の識別に疎かったり、時折視界に写っているはずの物に反応が鈍いことには気づいていた。夜騎兵や王都の兵卒たちには気取らせもしないそれを、褪せ人はモーゴットの前では取り繕ったことがない。
     立っているのがモーゴットであると気付いた褪せ人は柔和な笑みを浮かべ「マギ」とただ一人しか使わない愛称で呼びかけた。
     モーゴットは褪せ人の肩越しにその足元を覗き込んだ。褪せ人の背後から死角になる位置に、巫女の片割れである剣士が流体剣を手に片膝を付いている。
     褪せ人が頻繁に呼び寄せる2体の霊体は、平時にも従者のように付き従う姿はさほど珍しくない。だが、抜刀しているとなると話は別だった。
    「何をしている?」
     問いかけに、褪せ人はモーゴットに見えやすいよう霊呼びの鈴を高く持ち上げてみせた。
    「遺灰のみんなに声かけてるところ。ちょっと協力してもらえませんかーって」
     次いで、腰に提げた青緑輝石の杖を指す。
    「ほら、僕は祈祷がからっきしだから。魔術はどうしても氷と魔力属性に偏るし、手札を増やしたいんだ」
     炎とか雷とかね、と続ける。
     レアルカリアの輝石魔術と冷気属性の魔術を使いこなす褪せ人は、壊滅的に祈祷術と相性が悪かった。もっとも単純な回復祈祷の発動すらできないのだから相当だろう。
     くわえて、戦線で王都兵が展開した支援祈祷術が一切効かなかったことで、祈祷術の恩恵さえ受けくいという難儀な事実が判明したひと悶着もあった。祈祷術の投擲剣を徒手で粉砕されたことがあるモーゴットはある種腑に落ちたものだ。
     褪せ人が霊呼びの鈴を鳴らす。繊細な鈴の音に、堕落調香師の霊体が出現する。黄金樹を呪う意匠が施された装束を身にまとう霊体にモーゴットは渋面をつくった。
     呼び出された堕落調香師カルマーンは目線が近い2体の霊体とモーゴットを一瞥し、一際小さい褪せ人を見下ろした。
    「こんにちは。あなたはどうだろう、僕を手助けしてくれますか」
     褪せ人が穏やかに声をかける。調香師の霊体は羽織の下に腕を差し入れた姿勢で身じろぎひとつせず、褪せ人から目を動かさない。
     黙り込む霊体の、褪せ人に注がれる視線にモーゴットは不穏なものを気取った。呪剣が仕込まれた杖をひそかに握り直すのと同じく、褪せ人の肩を抱いた巫女の指先がぴくりと動く。
     調香師が懐から腕を抜くよりも早く、しなる流体剣の鋒が寸分の狂い無く調香師の首を跳ね飛ばす。青く透ける体がびくんと震え、剣を握りしめた手は制御を失い無軌道にぶらんと振れる。高く飛んだ首は頂点で霞へと解けた。
     よく躾られた猟犬のごとく流体剣が形を戻した後、残された体も消えた頭を追うように塵へ帰っていった。
     褪せ人は霧散する遺灰が残滓まで空に掻き消えるのを見届け、鈴をしまい込む。
    「みんな駄目か。…参ったな」
     顎に手を当て、むむむ、と首をひねる褪せ人の両肩を巫女が慰めるように撫でさする。
     今しがた呼び主を攻撃しようとした霊体が完全に消えたことを確信してから、モーゴットは杖を握りこむ力を緩めた。
    「霊体が言う事を聞かないのか?」
     褪せ人は引き連れている霊体たちと折り合いが悪いとはモーゴットも聞き及んでいた。彼らのやりとりを直接見るのは初めてだが、堕落調香師といい先の腐れ犬といいお世辞にも"折り合いが悪い"では収まらない有様だ。
     巫女が髪を優しく撫でるままにさせている褪せ人は「んー」と間延びした相槌を打つ。
    「元々そこまで好かれてないんだよ。みんな呼びかけには答えてくれるけど、友好的かと云われると」
     無視されるだけならまだ穏便な方、と褪せ人は肩をすくめる。
    「別にいい、予想はしてた。一通り確認できただけでも御の字だ」
     楽観過ぎではないかとモーゴットの喉に小言がのぼりかけた。あっけらかんとしている褪せ人にとっては深刻なことではないらしい。
    「今日はおしまいにするよ。二人とも、いつもありがとう」
     立ち上がった剣士が恭しく褪せ人の手を取り、額に押し抱く。巫女は褪せ人の頬に手を添え顔を覗き込んだ。
     距離も近いうえ霊体とその呼び主の関係と言うには行き過ぎているように傍目には受け取れる。褪せ人は薄く笑みを象るだけで、口を閉じている。
     巫女と剣士の霊体は揃って褪せ人にかしずき、去っていった。もはや見慣れて久しい彼らの立ち振舞は、しかし褪せ人にするには仰々しいほどであろうとモーゴットは思わざるをえなかった。
     片や褪せ人に忠実な2体の霊体、片や呼び寄せられた直後に敵意を向ける遺灰たち。同じ霊体の括りでありながら、褪せ人への対応はかけ離れている。
    「あれらも霊体だろう」
     腐れ犬や堕落調香師と同じ霊体である巫女と剣士を微塵とも警戒しないものか。
     みなまでは口にしなかったが物言いたげにするモーゴットを、褪せ人は横目で覗い見た。
    「あの人たちは別。気にするまでもない……大丈夫だ」
     剣士に取られた指先が熱を奪われていて、褪せ人は両手を握り合わせた。彼女たちのひんやりした感触は好むところではあるが、あまりに温度が下がると触れるものに気をつけなくてはいけない。以前針子のボックをそれで不用意に驚かせてしまい、手甲を外すのは控えるようになっていた。一方で巫女と剣士は褪せ人の温度を恋しげにするので、彼女たちに触れる時だけは素手を晒している。
     不意にモーゴットが屈み込み、褪せ人の片手を取り上げる。褪せ人は不思議に思いつつも手を引き寄せられるままに任せた。
     呪剣が仕込まれた杖を軽々と振り回すデミゴッドの手は大きく、握り込まれた褪せ人の手はたやすく埋もれてしまう。モーゴットからすれば紙細工に等しい褪せ人の脆い手を、潰さないように──あるいは逃げるのを許さないような──繊細な力加減で捕まえられるたび、褪せ人はくすぐったい気持ちになる。
     玉座での一戦であまりに鮮やかなその剣技に惚れ込んだ褪せ人にとって、モーゴットの手は触れられるだけで嬉しい魅力的なものだった。
     モーゴットの手から褪せ人の手にじんわりとぬくもりが移る。小黄金樹の木肌に似たかさつく手触りと、剣を握る者特有の皮膚の硬さを褪せ人はこっそり噛みしめた。自然と緩みかける頬を慌てて引き締める。
     気の抜けた顔を目ざとく見咎められれば、この気難しいローデイル王の読みにくい機嫌を損ねかねない。
     褪せ人が沸き立つ内心を抑えること数秒、モーゴットがそっと手を開放する。
    「冷えているな。素手で霊体に触れるなと言っただろう。まだ日も高い、陽の当たる場所へ行くがいい」
     手の冷え具合を測っていたらしく、のっそりと立ち上がろうとするモーゴットのローブの端を褪せ人は素早くひっ捕まえた。
     動きを遮られ顰め面をするモーゴットに、褪せ人の期待に満ちた目がまっすぐぶつかってくる。
    「マギと日向ぼっこ?する!」
     言ってもいない事を流れるように同伴まで指定されたモーゴットは眉間の皺を深くした。面倒くささを隠しもしない深いため息をつく。
     思いつく限りの文句を並べようと、褪せ人は引き下がらないだろう。見た目によらず執念深いことは身にしみて知っている。
     その執念深さを思い知らされた玉座での一戦は、いつ思い返してもモーゴットに疲労感をまざまざと蘇らせる。
     ストームヴィル城での接触時と変わらない装備で玉座にやってきた褪せ人は、しかし輝石杖を腰に刺したまま、代わりに鍔の湾曲したシンプルな短剣を構えて対峙した。その意図に気がついていれば、構えた短剣でこちらの剣撃を延々受け流され続けることも、我慢比べの如く一昼夜付き合うことも避けられただろうに。
     モーゴットはローブを捕まえる褪せ人の手を開かせ、改めて腰をかがめる。杖を持つ片腕を広げれば、褪せ人は満面に喜色を浮かべて捕まった。モーゴットは木の葉のように軽い体を抱え上げる。
     何ぞの折、焦ったように腕に縋ってきたのを咄嗟に反応して以来、褪せ人は抱えあげられるのを大層気に入ったようだった。煩わしいと撥ね付けようにも、あまりに他愛もなくにこにこと嬉しそうにされては、苦言を呈する気勢もそがれる。
     褪せ人に悟られず、ひそかに確かめたいこともあるモーゴットは、不承不承という顔で褪せ人を腕に招き入れている。
    「さて…褪せ人よ。今日はどこがお望みだ」
    「幻影の木がある方。使者さんたちが笛吹いてるでしょ、聞きながら寝たい」
     歩き出したモーゴットは褪せ人が腰掛けた腕をわざと軽く揺らした。褪せ人は危なげなく揺れにあわせて姿勢を整える。腕にかかるその重心をモーゴットは注意深く探る。
    (……ひとの重心とはこんなものだったか?)
     人体には当然骨格があり、腰骨あたりに重心が位置する。この大きさの誰かを腕に乗せた経験など皆無のモーゴットでも、乗せた際の重心位置ぐらいは想像がつく。しかし褪せ人が身体を預ける腕に感じるそれは、予想と食い違うように思えてならない。
     褪せ人に対してひそかに覚えた違和感の始まりが、それだった。
     霊体に奪われたというには不穏にすら思える体温の低さ。骨と肉で出来ている感触ではない掌の硬さ。
     目の届く距離で生活するようになった褪せ人を知るたびに、小さな不自然さが積もっていく。
     それとなく身体接触を繰り返し、モーゴットは欠けた破片から全体像を遡るように褪せ人を探ろうと試みている。
     不意に褪せ人がのけぞる。腕から落ちかける体重移動にモーゴットはぎくりとした。思わず足を止める。
     褪せ人は完全にバランスを崩す前に姿勢を正し、モーゴットのこわばった顔をけろりと見た。
    「尻尾があるってどんな感じ?」
     触れたがるようにちょいちょいと褪せ人が手を伸ばす先、モーゴットの背でゆらゆらと尻尾が揺れている。
    「坩堝騎士も尻尾がある人いたっけ。あれ叩かれると結構痛いんだよ。マギの尻尾も痛かった」
     狭間の地を探索する道中で彼らの尻尾に手痛い洗礼を頂戴したこと数知れず。しかしながら、坩堝騎士の祈祷の光を帯びた尻尾も、モーゴットの無骨で力の塊のような大きい尻尾も褪せ人は好きだった。一度くらいは巻かれてみたいなと密かに思っている。
     件の尻尾で褪せ人をしたたかに叩き伏せた覚えのあるモーゴットは、尻尾を褪せ人の手から遠ざけた。
     尚も身を反らして手を伸ばす褪せ人を空いている方の手で捕まえ、有無を言わせず腕の中に引き戻す。
    「暴れるな鬱陶しい。……降りてからにせよ」
     褪せ人の小さい身体を広げた己の指がすっかり一回りする様からモーゴットは意識して目線を反らす。
     壁のように褪せ人の身体を包み囲む掌は、しかし褪せ人を圧迫しないようにやんわりと隙間が作ってあった。
     手の中で褪せ人はじっとモーゴットを見る。明後日の方を向くモーゴットは横顔に刺さる視線を無視した。
     隙あり、と褪せ人は親切な掌に遠慮なくしがみついた。力加減の緊張に指先まで強ばる感触が伝わり、思わず笑い声が溢れる。
     降りたらその大きな尻尾にも全力で抱きつこうと褪せ人は決めた。モーゴットから許しを得た絶好の機会を逃す手はない。
     作られた隙間を埋めようと、褪せ人は抱きつく腕に力を込めた。



    ────────────────────────────────────────
    褪せ人:
    玉座での戦いをパリングダガーのパリィのみで戦い通した。パリングダガーはこの時のためだけに用意した物で、本来の得物は別にある。モーゴットと戦うのは楽しいのでずっと続けてもよかったのだが、一夜明けたところでモーゴットが辟易してしまったので一時中断。ぽつぽつと会話を交わした結果、食客としてローデイルに招き入れられた。
    目が良くないと勘付かれていることは気づいている。しかしモーゴットは何も言わず、詮索しないでくれているので、ありのまま振る舞っている。率直に言うと嬉しいし甘えている。
    霊体たちのあたりがきついのは予想していたので特段何も思っていない。逆にべったりと張り付くようになった夜巫女たちの期待していることが透けて見えるので少々困っている。
    玉座の戦いでモーゴットに呪血剣を抜かせるかぎりぎりまで迷っていたが、今でなくても良いと思い直した。

    祝福王:
    玉座での戦いを一昼夜延々パリィのみで応戦されて流石に気力が尽きた。王座が目的でないという褪せ人が持参した手土産を吟味した結果、条件付きで王都の滞在を認めた。
    玉座で戦った時と、目の届く範囲で生活するようになった褪せ人の印象に差が日々増えていくので距離感を掴みかねている。
    あれだけの数の霊体を引き連れておきながらまともに言うことを聞くのがほぼいないと知った時は唖然とした。唯一友好的な夜巫女と剣士の霊体は逆にべっっったりなので褪せ人はむしろ警戒しろ…いや私が見張ってやらねば…と思っている。
    腕の立つ褪せ人は今までにもいたが、一昼夜パリィのみで応戦し続けるような輩は初めてなので、普通の人とはこうだったか…?と少し自認識が揺らいだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator