短文まとめ 二府ゆびきり 2019
「えろう心配性やなぁ」
その微笑があまりに綺麗で慄然とした。
「ほんまに? ちゃんと戻ってくるって」
「指きりでもしよか。心配せんかて僕の帰るのはあんたの所以外あらへん。そうやろ?」
藤の涼やかな瞳に揺るがぬ光が湛えられている。
彼の腹は決まっている。
最早、小指を絡めることしかできなかった。
お題『迷子のお知らせ』 2019
「せやからあっこで右やったんとちゃう」
「そうやのうて、左にずうっと行くんが正解やってんわ」
迷った原因は分からないが、如何せん暑い。
「とりあえずそこで休もか。ほんま土地勘ないとかなんなぁ」
空調の効きすぎた店内で困り顔を眺めながら、あんたとなら迷子のままでも構わへんやなんて世迷言を、コーヒーで流し込むことにした。
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