『好きって言って』「行秋・・・ずっと伝えられなくてすまない。ぼくは行秋が・・・その、恋愛感情込みで好きなんだ。」
僕はその言葉に何て応えれば良かったのだろう。親友として過ごしたいのだと、そう思ったばかりだというのに。僕は重雲に何も言えなくて、黙ってその場から走り去ってしまった。
* * *
「・・・最悪。」
それは重雲の想いを知ってしまったからか。それとも重雲を傷つけるように逃げ出してしまった自分自身に対してか。いや、きっと踏ん切りつかない自分の心に対してなのだろう。・・・怖い。幼馴染として、親友として。その関係が失われてしまうことが酷く恐ろしい。でも、その先の・・・恋人という関係に憧れてしまう自分もいるのだ。
木の幹にもたれかかって、膝を抱えて俯く。自分はどうしたいのだろう。重雲が僕のことを好きだって、それはすごく嬉しいことのはずなのに。重雲の言葉を聞いた瞬間に、嬉しくて、喜ばしくて、泣きたくなるほどに感情揺さぶられた自分がいたはずなのに。『親友』という肩書きに執着している自分が離してくれないのだ。
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