誰そ彼誰そ彼
ふと目を覚ます。
違和感を覚えて首元に手をやると生命を維持するために繋がれた補助機の一切が取り払われていた。撫でおろすと、傷跡のひとつもなく、ただするりと滑らかな肌の感触がかえってくる。
では夢か、と口元がゆるんだ。
夢を見るのは好きだった。寝入りばな、あるいは覚醒までの微睡の間に恨みがましい目でただひたすらに睨め付ける者、力まかせに罵詈雑言をぶつける者、あるいは、見知った顔が予想もしない役柄で登場して間抜けな言動をしていたなと思い返す時間は思いの外楽しい。
その夢はどこだかわからない屋外のテラスではじまった。ふわ、と心地よい風に後ろから吹かれて、つい振り返る。
そこに弟がいた。ベンチに越かけて頬杖をついて、ぼんやりとした顔でこちらを眺めている。
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