さよならだけが人生ならば、また来る春はなんだろう『ハグ』というのは苦手だ。
文化圏としては挨拶として当たり前なんだろうが、何年経ってもどうも居心地が悪い。
幼い時はその慣れなさに、ハグをしようとした人を突き飛ばしたことさえあった。
あれは今思い返しても苦い思い出だ。
養父にも迷惑をかけた。
初めて自分の子供を抱いた時、
その温度を感じてやっと『抱き合う』という挨拶の温かさを理解した。
理解したからといって、慣れるわけではない。
ラムルの弟分であるナーラにされた時も、本当にぎこちのない返し方しか出来なかった。
ただナーラからのハグは、心地良さも感じた。
あの子を抱いた時のような。
鼓動を感じ、息吹が肌を掠める小さな命を包む感覚。
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