「貴方って失くし物が多いわよね」
僕には解らない魔法陣のようなものを杖で描きながら、
ため息のように彼女が溢した。
いつもは丁寧な喋りなのに珍しい。
「眠り谷にいた時も、戻ってきたとはいえ色々な感覚が既になかったですし、髪も無くして、使い魔も亡くして…私が寝ている間に家族と腕も…」
話しながら指を折っていく。
魔法陣はその件の僕が失くした腕の残り端に施している。
話してる内に書き終わった様だ。
ー右腕は家族を失くした時に一緒に失った。
正確には奪われただろうか?
事情を彼女に話たら卒倒し、小一時間説教を受けた後、性能の良い義手を作ってもらえる事になった。
これはその準備らしい。
説明が少ないのは学生の頃からだ。
「そうは言うが、君だってかなりのものを失くしているだろう」
2193