桜にわいた毛虫を拾う黒部と浮風「黒部ぇ、この子も追加ぁ」
浮風さんがトングで新たな子……何かよくわからない黒い毛虫をつまんで持ってきた。
「ふわぁ、ひっ、うぁっ……」
僕は未だに慣れないその毛虫を見ないようにしつつ、その毛虫が大量に入っている半透明のビニール袋……の中も見ないようにしつつそのビニール袋を開け、新たな子を迎え入れる。
地獄か。好きな子との課外活動で嬉しくはあるが、何だこの地獄活動は。
葉桜生い茂った立派な桜の木陰からこぼれる初夏のうららかな陽射しの中、僕はおぞましいもの……毛虫が詰まったビニール袋の口を握りしめていた。
その手の力を抜こうものなら、そのおぞましいそれらが這い上がってくるので必死に力を込めて締め続けた。
4571