静寂 ヒョンスは、間に合っただろうか。
目覚めてまず頭に浮かんだのはそのことだった。固い床の上に変な体勢で気を失っていたせいで、体の節々に違和感があった。下敷きになっていた左半身はすっかり痺れてしまっていて、起き上がるのに多少苦労した。立ち上がる前に壁へ背を預けて深い呼吸を繰り返し、覚醒しきっていない意識を揺り起こす。夜になり、窓から日が差してこない分、廊下の隅でぱちぱちと燃える火の明るさが目についた。
夢を見ていた気がする。あるいはなにかを思い出していたような。
ゆっくりと立ち上がり、足元に残っていた怪物の腕を拾い上げて火へくべる。そのおり確かめてみれば、本体の方は火の中でしっかり炭になっているようだった。手頃な鉄パイプに引っ掛けて腕を千切り、力一杯首をひねって締め落としたあと、復活する前に火種を見つけたのは幸いだった。それでどうにか始末はつけたが、何度か頭や顎に拳を喰らったのが原因だろう、廊下を出る前にぐらりと目眩がして、……こうして、いまだ。
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