隠し味は、もちろん決まってる「あ、そうだ。誕生日プレゼント何が良い?」
年下の恋人を自宅に招き、良い雰囲気に持ち込んでいざ、というタイミングで突然言われた言葉に、虎次郎はがくりと脱力した。
洗濯したばかりのシーツに押し倒されて、先ほどまでキスの余韻でぼぅとしていたというのに、一体この少年は何を考えているのだろう。
このまま返事をせずに事を進めてしまうのも躊躇われて、仕方なく体を起こすと、気づかれない程度のため息を漏らしながら肩をすくめた。
「なんだ、急だなぁ?」
「……いや、思い出した時に言っとかないと、その……訳わかんなくなっちゃうから」
若干乱れたパーカーの裾を直しているのか弄っているのか、布地をやたらと引っ張りながらそういう暦に、へぇと余裕のある笑みを見せながら、脳内では焦らしプレイという言葉が浮かんだのを打ち消した。
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