欲しくて仕方のないもの 『明日、ちょっとでいーんだけど会えない?』
そんな連絡が入ったのは、クレイジーロックに関する保守作業を終え、そろそろ休もうかとしていたタイミングだった。
スケジュール帳を見て、夜であればまとまった時間が空けられる事を確認し、簡潔に返信を送る。
業務連絡の如き簡潔さに、我ながらもう少し言葉を添えるべきだったかと悩むが、それよりも気が急いてしまったのだと思うと、年上の癖に余裕が無いなと苦いものを噛み締めてしまう。
宛先である少年から明確に日程の希望がくるのは、珍しい。大体はどちらかが空いてる日をいくつかあげて、その中で都合のつく日をどちらかが返信するのがいつもの流れだ。
それは、学生と社会人であるお互いの生活リズムや環境が合わなかった為に出来上がった流れであり、何かと多忙な忠に合わせて少年が気を遣った結果でもあるので、忠が少しばかり負い目に感じている部分でもある。
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