ジワジワ暑い夏。
誰もが涼しさを求める暑い夏。
自分だって例外ではなく、何か涼む方法はないかとぼんやり店の玄関先で外の風に当たっていた。
すると夏を背負って歩いているような少年に声をかけられる。
「兎和!あっちぃな!なんか冷たいもんちょうだい!」
「…お前が静かになれば少しは涼しくなるだろうよ」
大人気なく嫌味を投げると、どういう意味だ?と心底分かっていなさそうな顔で打ち返される。
静かにしてくれたら、ジュースくらい出してやるよって意味だよと答えて夏を迎え入れた。
★
「ピート、お前暑い暑い言う割に元気だよな」
少年、ピートの前に置かれた透明のグラス。
その透明を染めていくようにオレンジジュースが流れ込んでいく。
じっとその様子を見ていたピートは「そうかなあ」と兎和を見上げる。
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