「あなたの隣には誰もいない」
かつて聞いたことのある言葉にラインハルトはひょいと眉を上げた。
何の話をしていたのだったか、ゆるゆると記憶を辿るが、この夜闇の如き友人がつらつらとなにかを喋っていたことしか思い出せない。
城の私室でチェスをして、その後酒をなめながらまったりと話をしていた。途中から意識がふわついて、ぼんやりし始めてしまった。友人の声はどうにも眠気を誘う。
いつのまにか側にいた友人に手を取られて、指先に口付けられる。指先の後は手の甲と、徐々に上ってくるキスの位置。
「あなたの孤独を誰も理解しない」
どこか優越感の滲む声だ。
頬へのキス。唇へのキス。ちろりと唇を舐められる。
いつもならばここで唇を開いて、侵入を許すところだったが、なんとなく止めた。友人の肩を押して、身体を離す。
638