戦場の直治さん煤けた迷彩服、点滴の管に繋がれた生傷だらけの細腕、片目を覆う包帯、ぼんやり虚空を見つめる直治さん。
東南アジアもしくは赤道付近の紛争地帯。民営軍事法人の個人雇いの傭兵。登録しているのはワケありの人間ばかり。直治さんも例外ではなく、その細腕で人が殺せるかい優男?と冷やかされる。言い返すことなく、薄笑いを浮かべて流している。いつも人の輪から少し距離を取っている。自分から仲良くはならない、別れが辛くなるから。今日生きてるやつが明日も生きてるとは限らない。目の前で戦車の弾に吹っ飛ばされる同僚を見たこともある。ここへ来た目的のひとつは痛みを思い出すためでもあったのに、返って麻痺してくるのだから、困ったものだ。ぐっと拳を握り込む。点滴の針が刺さっている箇所がチクリとした。まだ、生きている。
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