母親に頼まれていた用事を思い出したとかで「先帰るゴメン!」と叫ぶなり武道が走り去ったから、千冬は日向と路上に取り残されてしまった。
(て、どうすんだ、コレ)
川縁の土手の上、進むには一本道だから「じゃあここで解散」というわけにもいかず、分かれ道までしばらく一緒に歩かなければならない。
友達の彼女と二人きり。日向が親友にベタ惚れなのは嫌と言うほど知っているからこれがチャンスなどと思う気持ちも勿論起きず、残るのはただ、申し訳なさだけだった。
「何か、ゴメン、タケミっちとの間にオレ入っちゃって」
そう言いながら歩き出す千冬の隣に、日向も並んだ。さっきまではこの間に武道がいたのだが。
――日曜日、暇だったので街に武道を呼び出してぶらぶら遊んでいたら、塾帰りだという日向と行き合った。
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