マリみてパロ詰め1.多喜啄
たきじ(1年)とたくぼく(3年紅薔薇様)
「あ」
とお互いに声が出た。
いつものように昼休みに聖堂の隅にある小部屋に逃げ込もうとした時の事だった。そこは何に使っている部屋なのかはよく知らない。知っているのは小さい部屋で滅多に人がこず外にも声は響かないということだけ。誰もいないだろうと信じ切って開けた部屋に先客がいたのだ。
相手の顔は酷く狼狽していた。一年生だろうか、見たことのない顔である。癖のある柔らかい猫っ毛が肩のあたりから伸びている。床に座り込んでいるからよくわからないけれどやたらと手足がすらりと長い。綺麗な足をしているなと助平親父のような事を思った。
「先客か?悪い、出ていくから」
先客がいたのなら仕方ない、出ていこうと背を向ける。こんなところで何をしていたんだろうと聞きたい気持ちもあったけれど、初めて会った下級生に尋ねるなど自分のお姉様のお姉様にあたる先々代の赤薔薇様でもあるまいし聞けやしない。
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