ときめきに帰す「起きろ。さもなくば無理矢理どかす」
頭上から浴びせられる物騒な目覚まし音に、エリジウムは渋々まぶたを開く。早朝、曇り空、やや肌寒い。それもそうだ。ベッドの傍らに立つ男――ソーンズはいつも通りの服装に着替えているが、自分は半裸だ。
――同郷の友人、同僚である男と、寝てしまった。その翌日、その張本人に起こされた場合、なんという言葉をかけるべきか。
数秒考え、おはようあんまりいい天気じゃないね、こんな日の朝は濃い目のあたたかなコーヒーから始めたいな、僕が作るからどうだい君も一杯……といつもの調子で捲し立てようとしたエリジウムのあいさつは「紛失したピアスを探させろ」という一声に遮られた。
その言葉に、エリジウムはソーンズの耳を見やる。いつも複数の金属で飾られていた筈のそこは、確かに今、丸裸だ。
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