ちちみず「あったかいな、お前」
そう呟いた水木が、とん、と隣に腰掛けていたゲゲ郎の左肩に頭を預けた。温もりを求めるかのように、水木の右手がゲゲ郎の手を取る。ひやりとしたそれに温度を分け与えるように、ゲゲ郎はそっと水木のそれに指を絡ませた。
「そうか。……わしには、おぬしの冷えた肌が心地良いよ」
ああ、それならちょうど良いと、そう言って微笑んで寄り添う水木の身体からは、およそ温度というものを感じない。幽霊族である己よりもしんと冷たい、雪のようなその身体を半身に感じながら、ゲゲ郎はゆっくりと目を伏せた。
——今の水木は、死人である。
数年前の或る冬の日、水木は死んだ。
何のことはない。人の身であの悍ましい村の怨念を、窖の瘴気を受けて長く生きていられるはずもなかったのだ。水木が鬼太郎を拾って十年、ゲゲ郎が目玉から元の姿に戻って二年ほど経った夏の終わりの頃。涼やかな風が吹き抜けた部屋でけふ、と小さな咳と共に血を吐いた水木の驚いたような顔を、ゲゲ郎は未だ忘れられない。
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