もとより扉は開いていた。リビングに繋がる出入り口から、先に食事を終えたルームメイトが書斎に足を踏み入れたこともわかっていた。
頭の中で闇雲に絡まった糸はもくもくと膨れあがり、カーヴェの意識を現実から引き離す。解決の糸口を掴んだと思っても、それは水面に浮かぶ藁であったり、煙に映る影であったりして、一向にほどけていく実感がない。自分の深いところを浚ってみても、砂金の一粒も見つかりそうになかった。
書斎の片隅で広げた紙面には、精緻な設計図が描かれている。カーヴェがここしばらくかかりっきりで引いていた美しい図面を、描いた本人は苦々しい気持ちで睨みつけていた。
あと少し、何かが足りない。喉元まで出かかっているはずの答えがどうしても出てこない。ペンの先を押し付けた紙にはインクのシミが広がるばかりだ。もがけばもがくほど後退して、まるで流砂に足を取られたような焦りで頭を掻きむしりたくなる。
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