猫が見ていた 行きたいか、と訊かれた。
居合といえど、人殺しの技。だから真剣を使う。
そう言って、父親は伝来の直ぐに樋をかき通した刀の鯉口を切り、三寸ばかり見せたその刀身にちょうど生駒の視線を迎えるようにかざした。
『おまえが7つの頃から持たされたこれは命を断つ為の道具や。例えば誰かを救う為、例えば主の命、例えば己の矜持を守らんが為……どんな言い訳をしようと人を殺め得るゆえのこと。それをなそうとなすまいと。おまえはこれを手にして得た技術で、どうあれ何かの命を斬ることになる。その覚悟は出来てると思うとるか?』
『……それは』
まだ十六の生駒はとっさに答えることが出来なかった。
一年ほど前の春のことだった。三門市という、京都で生まれ育った生駒からしたらあまり聞いたことがない、どこの県にあるのかもとっさに出てこないほどに見知らぬ街はその日、一気に日本国内ばかりか国外にもその名を知らしめることになった。まるで日曜朝の子供番組から抜け出てきたような、異世界からの望まれない来訪者によって。
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