「やあ、みずかみんぐ、きみ、今暇だよね!」
その日、生駒隊作戦室の奥の畳敷の上で惰眠を貪るべく長々と寝そべっていた水上は、ドアが開け放たれると同時に部屋の隅々まで響き渡るような朗々とした高らかな声にびくっと跳ね起きた。
その呼びかけ方で声の主など一瞥もしなくても分かる。もっとも水上的にはやや不本意なれど、その透明感のある、艶を備えた涼しげな声音だけで誰なのかは分からないはずもなかった。なにしろその唇の感触と温度だって知ってるのだから当然のことではあった。
ごろりと水上は寝返りを打って、ドアのほうへと体を向ける。果たしてそこにいるのは推測に違わず、甘い紅茶色の髪とラムネの瓶みたいな澄んだ青の瞳の少年の柔らかさを備えた青年、王子一彰その人であった。
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