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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    いこみずワンドロワンライ40th お題「約束」途中まで!

    #いこみずワンドロワンライ
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    #いこみず
    freshWater
    ##いこみず

    猫が見ていた 行きたいか、と訊かれた。
     居合といえど、人殺しの技。だから真剣を使う。
     そう言って、父親は伝来の直ぐに樋をかき通した刀の鯉口を切り、三寸ばかり見せたその刀身にちょうど生駒の視線を迎えるようにかざした。
    『おまえが7つの頃から持たされたこれは命を断つ為の道具や。例えば誰かを救う為、例えば主の命、例えば己の矜持を守らんが為……どんな言い訳をしようと人を殺め得るゆえのこと。それをなそうとなすまいと。おまえはこれを手にして得た技術で、どうあれ何かの命を斬ることになる。その覚悟は出来てると思うとるか?』
    『……それは』
     まだ十六の生駒はとっさに答えることが出来なかった。
     一年ほど前の春のことだった。三門市という、京都で生まれ育った生駒からしたらあまり聞いたことがない、どこの県にあるのかもとっさに出てこないほどに見知らぬ街はその日、一気に日本国内ばかりか国外にもその名を知らしめることになった。まるで日曜朝の子供番組から抜け出てきたような、異世界からの望まれない来訪者ネイバーによって。
     そしてつい先日のことだった。街を蹂躙した化け物を倒し、今や街を守る盾となった防衛組織の人間が生駒の住む街に勧誘しにやって来たのは。
     説明会があると聞き足を向けたのは、いつかテレビで見た、新しく入隊したという同じ年のふたりの防衛隊員の少年の姿が脳裏に過ったせいだったかもしれない。
     答えを探しあぐねて口をつぐんだ息子にその父は、開け放たれた掃き出しから見える塀の上を歩くチャトラの猫を指さした。近所のあちこちで見かける野良猫だ。まるで自らを俎上にあげていることを悟ったように、その猫は足を止めると、そのあかがね色の瞳をこちらへと向けた。
    『あれもひとつの命。斬れるか、達人』


     それでどないしたんですか。まさか斬ってもうたんちゃいますよね!
     かげうらで鉄板を囲みながら、隠岐が悲鳴交じりに声を上げる。
    「斬ってへん斬ってへん」
     ひらひらと生駒は手のひらを泳がせた。
    「誰も飼ってへん猫かていけずしよったら、動物愛護法でおロープを頂戴することになるで~ってじいちゃんがツッコんでな」
    「なら良かったです。はい、どうぞ」
    「おう」
     拍子切りにしたお好み焼きの一片を生駒の皿の上に乗せてあげながら、水上はその横顔を伺う。ぱくりとお好み焼きを口に放り込む生駒はいつも通りしごく真面目な表情かおで。
    「もしそこでおじーちゃんがツッコんでくれなかったらどないするつもりやったん?」という真織の問いに、生駒はごくりと飲み込みながら考え込む。
    「あー……どうするつもりやったんやろなあ。覚えとらんわ。あ。海、そっちの海鮮ミックスもうひっくりかえせるやろ」
    「はーい」
    「待て待て片手でやるな無理だアホ崩れる」
     ほら見ろ!と水上が止める間もなく、まだ半生の生地はタコやイカやエビ諸共に崩れてべちょりと無様なありさまで、しかし鉄板に炙られていい匂いを上げる。
    「火が通れば大丈夫だから、ま、ええやん?」
     鷹揚な隊長の言葉に「そうですよね!」という反省の色のほとんどない戦犯の明るい声を聴きながら、水上は彼の手のひらが血に染まっていないことに嫉妬のような思いを抱いていた。
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    palco_WT

    MAIKING折本にするつもりだったけど流し込んだらはみ出て笑うしかなかった……加減……分量の加減……狭い遠征艇での窮屈な環境と、門による跳躍が影響する三半規管だかトリオン臓器に由来する何かの器官に由来するもののせいなのかは分からないが、いわゆる空間識失調《バーディゴ》っていうのはこんなものなのかもしれない。
     シャバの空気を吸って半日以上経つのに、まだ本復しない体にハッパをかけながら、休暇明けには提出しないといけない仕事に手をつけては、もう無理と倒れ、いややらないといけないと起き上がり、しかし少し経ってはちょっと休むを繰り返していた冬島の携帯端末が着信に震えたのは、そろそろ空腹を胃袋が訴えかけた夕暮れ時だった。
    「おう、何だ、勇」
    「隊長、今からそっち行くけど、なんか買ってくもんあっか? どうせ、遠征から戻ってからぶっ倒れたままだろ」
     ありがてえ、とローテーブルを前に床にひっくり返って天井を見上げたまま、冬島は携帯端末に向かって矢継ぎ早に告げる。
    「弁当なんでも、あと甘い菓子パン何個か。ドーナツでもいい。それとチョコレート味の何か」
    「何かって何だよ。ケットーチ上がるぞ。カップ麺は?」
    「ハコでストックしてあるから大丈夫」
    「その分だと缶ビールもいらねえな。煙草《モク》は?」
    「そ 3454

    水鳥の

    MOURNING初のイコプリSS。大半が十九歳。関西弁は空気で読んでください。 付き合ってからと言うもの、王子は事あるごとに生駒に好きを伝えたがる。
    「好きだよ、イコさん」
     時も場所関係なく伝えられる言葉に、生駒は不思議そうに尋ねたことがある。
    「なんや、王子、どないしたん?」
    「うーん、何でもないよ。ただ言いたいだけ」
    「それなら、ええ」
     にこにこといつもと変わらない笑顔を張り付けて、王子は生駒に言う。生駒は、本当にそうなら問題ないな、と頷いた。
     
    「で、今も続いてる、と」
     生駒から経緯を聞いていた弓場は、片眉を器用に持ち上げて嫌そうな表情をした。
    「そうや」
     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
     日差しの気持ちよい午後、ボーダーのラウンジの一角に何故か十九歳組が集まり、何故か近況はどうなのかと言う事になり、何故か、王子と付き合っている生駒の悩み相談が開始された。
    「王子も可愛いところあるじゃないか」
     嵐山が、どこが悩みなんだ? と不思議そうに言う。
    「いや、何回も続くと生駒も鬱陶しいんじゃないのか?」
     嵐山の問いに柿崎が答える。
    「いや、そんなんないな」
     生駒は、当たり前だと言うように柿崎の言葉を否定した。
    「ないのかよ」
    1089

    palco_WT

    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983