君思う故に桜散るらむトーマは今でこそ稲妻に馴染んでいるものの、
稲妻に初めて来た頃に異国人だから物凄く迫害されていたとしたら、
毎日毎日心身ともにキツいのに綾人の前では「お気になさらないでください」とか言ってる。
それが何日も続く。
ある日の夜。就寝前に少しだけと綾人はトーマと会話の時間を設けた話。
「……何か、不手際がありましたか」
綾人はとにかく時間がない。忙しい日々でわざわざこのような時間を取るなんて。
それを知っているから、トーマは早々と自分から切り出した。
「いいえ、貴方の仕事は大したものです。何一つ、責める点はありません。しかし……」
綾人のいつもの柔和な表情に陰りが差す。
トーマは何を言われるのだろうと畳を見つめていた。
1997