※けきばれんたけ 途中まで※からり。
乱雑に投げた箸は壁に当たり、冷えた床へと吸い寄せられた。その行く末を見守ることもなく、艷めく銀色を揺らしながら、漣は口いっぱいに含んだ肉塊を、忌々しげに咀嚼する。もう、何度目かもわからない、全く以て味のしない食事に、死んだ方がマシではないかとさえ思うのだが、そんな漣を許さない男が一人居た。
「これも食べられないか…………」
「らーめん屋」
「なら次は……味付けを変えてみるか…………?」
「おいコラ、らーめん屋! 無視すんな!」
円城寺道流。
まともに食事を取らなくなり、路地で倒れそうになった漣を介抱しただけでなく、無理矢理己の家に住まわせたこの男。陽光を思わせる笑みは、彼の人柄の良さを表しているのだろうが、これまであまり人と関わって来なかった漣にとっては、どうにも苦手な部類の人間だった。
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