スナイパーの本分は的に命中させることだ。的が何であれ、それ以上もそれ以下もない。それはわかっている。わかっているが、機械のように命令された通りに引き金を引くことだけが任務だったならば、どれだけ簡単だっただろうか。ただ、役目を全うする駒として何も考えずに済みたいのだが、そうもいっていられない時はあって。
「今日の任務は面倒だったな」
今回も、が正確か。組織の任務で面倒ではなかった任務なんてひとつもない。
ふうと小さく息を吐き出した。立派な仮面とスーツに身を包み、ターゲットに近づく。多少のボディタッチはご愛嬌のようなものだ。この時点で面倒極まりない。
事前に背格好は伝えられていたが、人相で判断ができないとなると多少の苦労を伴った。とはいえ、抜け目のない女のおかげで仮面があろうとターゲットを捕捉することはできたが。
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