7️⃣不在の間に胎にされていた5️⃣♀の話。『ありがとう』
たった五文字だった。その五文字が私を動かした。仕事に追われて、疲れていたのかもしれない……明日だったら、違った答えを出した可能性もある。
七海建人は、昼食用にと買った総菜パンが入ったショッパーを手に、職場に向けた爪先をぴたりと止めた。明日にでも連絡しようと思っていたのに。足がこれ以上進まない。
今日だ。今すぐでなければ。
肚を決めてしまったら、心変わりは早かった。頭の中で辞表の文面を考えながら、スマートフォンを手に取った。ずっと消せなかったアドレス帳の一ページ。
『五条悟』
あの日、桜の下で別れを告げてから一度も呼び出さなかった番号。呼び出せなかった番号。
「何かあったら電話して?予定合わせてご飯行ったりしようよ」
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