深淵より愛を込めて/天空より手を伸べる 呼吸する度、取り込んだ火の粉の混じる煙が烈しく喉を焼く。それが粘膜を毒しながら通り過ぎ、じわりじわりと体内を冒しゆくことを阻止できない。すると咳が出た。初めは咳払いで誤魔化そうとしたが、無理だった。軽く喉を震わせるだけのつもりがそれに呼応して気管がじくじくと疼き、噎せた。これが何度息を詰まらせても止まらないのだ。口に手を当て、ついには腰まで折って前屈みになる。同時にごぽと臓腑が鳴った。迫り上がる嘔吐感にも抗えない。口を覆っていた手では受け止めきれず、指同士の隙間から己の吐いた赤黒い血が溢れ、それはびちゃという音を伴って地に落ちた。そして煤色の土を汚した。じわり。目に生理の涙が滲む。それは紅く色づけた目尻に溜まり、瞬きの拍子に零れ、頬を滑った。
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