怪物の眼は緑色をしてはいない その赤をひとめ映したその時から、己の心は焼け落ちたのだろう。今でも、カフェはそう思っている。
からだが燃える。焼ける。熱を持つ。その熱さが肌を舐め、脳みそをくらりと揺らし、声を聞けばとろけるような甘さが耳に残り続けて、あの眠たげな赤と金がいつまでも瞼の裏に焼き付いて、いつまでだって彼が頭の中から離れやしない。
今までだって誰かを好きだと思った事はあるし言葉にしたことだって山のようにあるけれど、好きだなんて言葉では足りなくて、愛してるでもたりなくて、これ以上の熱さなんてカフェは知らなかった。知るならば彼から与えられるものでなければきっと意味がないし、彼以外からは知りたくもなかった。この心に熱を灯すのは、いつまでも彼が良かった。
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