その黄金に恋をした恋に落ちる衝撃を雷に喩えた作家がいた。初めてその言葉を知った時、ぼんやりと「そうなんだな」くらいにしか思わなかった。しかし、ライトに照らされた彼を見た時、その言葉が事実であった事を知ったのだ。
「お前も聞いたことくらいあるだろ?文武両道眉目秀麗、演劇ダンス声楽なんでもござれの『ケイ様』の話」
「……あるけど、急になんだよ」
目の前で楽しそうに話すのはソテツ。一年の時に同じクラスになって以降、割とつるんでる情報通。コンプレックスの顔をメガネで誤魔化して教室の片隅で本を読む俺とは正反対のタイプ。なんで俺みたいな陰キャに絡んでくるのかは、いまだによく分からない。
「で?その『ケイ様』がなんだよ」
「来月だったか?演劇部として舞台に立つらしくてな。お前も興味があるんじゃ無いかと思って」
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