だれも肯定していない「『Kneel』」
「……はいはい」
営業中のスターレス、そのホールの真ん中でソテツはゆるりと片膝をついた。ざわめく客と様子を伺うキャスト。当の本人は黙ったまま頭を垂れて跪いており、Commandの主はソファに座る一人の女性客を睥睨していた。
「Colorの着いているSubにパートナー契約を持ち掛けるとは。恥と常識を知らぬのだな」
ここは店であり、ケイはキャストだ。普通であれば彼女が客に対して威圧的な行動を取ることは無い。しかし今回だけは事情が事情だった。周囲の体感温度が下がっている気もするが、決してGlareを飛ばさないのはSubの客への配慮なのだろう。本能に飲まれてDefenseしてもおかしくない状況で、それをコントロールするケイは流石と言えた。しどろもどろになる女性客に、ケイは一つ大きくため息をつく。それからひらりと手を振った。
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