石神家の双子の弟はママ神と呼ばれています昼休みが始まってすぐ、教室の出入り口を見たら目つきの悪い男と視線が合った。
「おい、千空。忘れ物だ」
なんの遠慮もなく入ってきた不愛想な男は俺の席までくると緑色の布包みを渡してきた。
黒髪に緑色の瞳。目立った造形の違いはそれだけの俺の双子の弟、黒だ。
「……わざわざ届けに来たのかよ」
それは紛れもなく俺が朝忘れていった弁当である。少食だからと黒よりも一回り小さいサイズにしてある。
「何だよ、せっかく持ってきてやったっつーのに」
礼より先に不満を言う俺に黒も文句で返してきた。
感謝を感じていないわけではないが、ちらちらと伺ってくるクラスメイトの視線が煩わしくて弟に伝える余裕がない。こんな人目がある場所でなければ素直に「助かったわ」くらい言ってやれただろうに。
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