クローン千空ちゃん 顎に指をかけられて上を向かされる。目深にかぶったフードの影が消えて急に視界が明るなったかと思うと、そこに紫色の瞳が並んでいた。
「柘榴石みたいで綺麗だね」
自身の額を飾るアメジストよりも宝石に見える双眸を持った男は俺の瞳を覗き込むと感心したように声を出した。驚きに目を丸くしたまま男は首の角度を何度も変えて俺の顔をじっくり見ると急に瞳がスッと細めた。
「ジーマーでゴイスーそっくりだよねぇ……そっちの王族にはもしものために生まれたと同時にクローンを一体作る決まりなんだっけ?」
冷えた言葉に身体の下の方からぞわりと恐怖が駆け上がる。クローンは俺の国の国家機密。潜り込んだスパイにもわからないようにして最新の注意を払って育てられる。国民や他国には双子だと偽り、有事の際には王族の血を流したり、絶やしたりしないための道具として使われてきた。
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