「分からずやの僕たちは」② 文化祭が終わり、一週間後。秋の終わりの学び舎には、三年生たちの憂鬱な顔が並んでいた。受験勉強に疲れた生徒もいれば、就活に悩んでいる生徒もいる。泣いても笑っても、この高校に通えるのは、あと四か月ほどしかない。そう思うと、心の中にぴゅうっと冷たい風が吹いた。
放課後、晶はクラスで日直の仕事をこなしていた。日誌を書いていると、目の前にいる青年が欠伸をして、眠たげな声で訊ねてきた。
「まだですか?」
とろんとした眼でミスラがこちらを見る。
「すみません。あともうちょっとなので……」
シャーペンを走らせ、日誌の欄を埋めていく。
晶はミスラと、特になんの約束もしていない。けれどミスラはときどきこうしてふらりと晶の前に現れて、どこかへ連れていく。ファミレスだったり、映画館だったり。それはミスラの行きたい場所だったり、晶の気になる場所だったりする。約束はいつもしないけれど、そういう時間は心地よかった。
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