Oh My Honey!!山南の気持ちは晴れやかだった。
鉛色の曇天だろうとも、あと1時間もすれば恋人が迎えにくるのだと思えば、浮かれようというものだ。
ペーパーバックも開いただけで進んでいない。
一行読んでは考え事に捕らわれ、一行読んでは物思いにふけり、そのうちに筋がよくわからなくなってやめた。
祖父から譲り受けた腕時計はもうほとんどアンティークだ。けれども、ムーブメントは現役で、しっかりと時を刻んでいる。
「……」
落ちかかる髪を耳にかけ、顔を上げる。
通りには、仕事帰りと思しき人々。週末だからか、皆、楽し気に見えた。
恋人を待つ時間は嫌いではない。
彼とは一年ほどまえから親密な付き合いをしている。年下の、かわいい人だ。一所懸命口説かれて口説かれて、根負けした。
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