祈る夜空の星落ちて「けほっ……」
乾いた咳が部屋に響いた。寝台の側に座る男は吸飲みを差し出し、咳の主が細い腕でそれを受け取った。一口、二口、吸飲みの水を口に含んで喉を潤した女は、かつては目を見張るほどに美しかったのだろう。しかし、今はその面影を残しながらも誰の目から見ても明らかなほど青い顔をしている。
「ごめんなさい……いいえ、ありがとうございます、浅葱さん」
「なに、気にすることはないよ千羽君。それより、少し落ち着いただろうか」
浅葱と呼ばれた男は静かに首を横に振る。流れるように千羽と呼んだ女の手をとると、彼は慎重に握りしめた。そんな男に、握って折れるほど柔くはないと彼女は笑いかける。それでも彼はその言葉を笑えずにいた。それほどまでに彼女に残された時間が長くはないことを知っていたのだ。彼女もまた、そのことには薄々気づいていた。
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