よるのはな 八月に入り、いよいよ真夏も本番を迎えた。太陽はじりじりと照りつけて、うだるような暑さが続いていた。
久しぶりの休日に、ジュンは胸を躍らせていた。まずは、雑誌の表紙の撮影に向けて、筋トレをして身体を絞る。それから、涼しい寮の部屋でスマホのゲームをプレイしたり、借りた漫画を読む。この日はゆっくり過ごそう。前々から、密かに計画していた。
ジュンは、トレーニングルームで一息ついて、Tシャツの裾で汗を拭った。
自分が所属するユニット、Eveのリーダーである巴日和に拾われてからは、ありがたいことに、アイドルとして仕事は順調で、忙しなくも充実した日々を送っている。期待に応えたくて研鑽するプレッシャーは、燻っていたあの頃に比べたら、心地よい疲労なのかもしれない。それでも、気づかない間に蓄積されるものはあって、肩肘張ってばかりでは、パフォーマンスが落ちてしまう。
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