おぼめぽ回 4周目開始編目の前を歩く、自分よりも背の低い女の後ろ頭をじっと見る。長い三つ編みが左右に揺れている。
「ユーリ」
そう声を掛けると女は振り返った。
「はい。なんでしょう、覚者様」
「ずっと歩き通しだろ。疲れてないか?」
「まだ大丈夫ですよ」
そっけなく答えた。そっけないだけでなく、凛々しい眉と吊り目で俺を見るものだから出会って初日は怒っているか嫌われているのかと思っていたが、どうもそれが彼女のデフォルトらしい。
「そうか……」
会話が終わってしまい、ユーリと名付けたポーンはまた前を向いて歩き始めた。俺はその後をついて行く。
どうやら俺は記憶を失っているらしく、頭の中に残っているものと言ったら生活する上での一般的な事と自分の名前くらいだ。会話の引き出しが少なすぎる。とりあえず目についた物や思いついた事をネタに話しかけてみるが、少し話したくらいで会話が終わってしまう。
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