情けない。
ゼンダに、支部へ帰ってかりんを休ませるよう言った。彼はおとなしく、かりんを抱えて部屋を出た。
今日のゼンダはずっと、おとなしかった。普段はヒメジに負けず劣らず怒りっぽいあいつが、この場で一番「師匠」であった。私よりもずっと。
情けない。
犯人に対する怒りは、もうなかった。
そもそも自分には、犯人を責める資格すらなかった。
履歴書を見ても、それは同じだった。
教え子を理不尽に奪われた怒りがまるで湧いてこない自分に驚いた。
「メジロ」の名を貶された時だけ、名付けた自分のために腹を立てた。
そんな自分に絶望していた。
なんて、情けない。
「ああすみません、これ送るまで、ちょっとだけ待ってください。終わったらいくらでも殴られますから」
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