燻る想いを攫う残り香時刻は真夜中。ニューミリオンの街も黒い
ヴェールに覆われて、静寂に包まれている。靄が掛かった月が朧気な光を溢し、青白く世界を浮かび上がらせた。野良猫の鳴き声すらも聞こえない。そんな夜。
今から数時間前の、昨晩。パトロールが終わると、足早にその場を立ち去ろうとするキースを呼び止めた。分かりやすく嫌そうな顔をした男を、あの手この手で言いくるめて、ボロアパートへと転がり込んだ。そして今に至る。
お互いの欲をただぶつけ合うだけの乱暴な行為により乱され、ぐちゃぐちゃになったシーツを見つめる。暇を持て余した指を、シーツの皺に這わせた。キースはというと、紫煙をくゆらせながら窓の外を見つめている。煙はゆらゆらと昇って、静かに消えていった。
2448