木漏れ日の面影 ホームズが手を身幅ほどに広げたかと思うと、今度はゆらゆらと揺れてみせたので、亜双義は「そうではなくて」とため息混じりに軌道修正を試みる。
「だって、キミが聞いてきたんじゃないか。『父親になった瞬間、どんな感じでしたか』って」
「オレは心境を知りたいのであって、彼女と出会った瞬間を再現してほしいわけではありません」
辟易しつつも帰るそぶりを見せぬ亜双義に対し、ホームズは興味深そうに眉尻を上げている。亜双義はこの男がしばしば見せる、人を試すような態度をあまり快く思っていない。この苦手意識はかつて彼の手のひらで転がされた――結果として亜双義は彼に救われたとも言えるわけだが――苦い記憶に起因するのかもしれない。
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