自転と公転をくり返しながら 弁舌をふるい終えた亜双義は、隣に座る友人の背中を叩いた。カフェにはとても似つかわしくない大音声と物騒な言葉の数々――何ともものものしい。日ごろであれば首根っこを掴んで店の外に放り出しているところだが、事情が事情だけにそうもゆかず、バンジークスは痛むこめかみを押さえながら冷静を装った。そのしぐさが気に入らないのか、亜双義は苛立ちに任せてアイスコーヒーのグラスをストローでかき混ぜている。
「……何だその顔は。キサマには人の心というものがないのか?」
「それはこちらの台詞だ。そなたが大きな声で何か言えば言うほど、ミスター・ナルホドーの立場が悪くなるのが分からないのか」
「ム……」
青ざめた友人の顔を気の済むまで睨みつけると、亜双義はようやくストローに口をつけた。成歩堂は愛想笑いを浮かべているものの、眼窩は窪み、唇からは血の気が引いていた。
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