朋の音 いつからか、弟には少し奇妙な癖があった。
元々「少し」どころか大層変わったところのある弟だったが、その癖は「少し奇妙」というのがふさわしい。なにしろ、特にこれといった特徴のないところで歩みを止めるというだけだ。
甘味処、橋の上、通り、舞台、河原、はたまた誰が住んでいるかもわからぬ民家に打ち捨てられた堂。人がいるなしも、天気も、日にちも特に関係がなかった。同じ場所でも素通りのこともある。ならば弟自身に理由があるのかと思えばそうでもない。
足を止めるといっても動かぬようになるわけでもなし、すぐに再び歩き出す。皆大して気に留めず、「またか」と思うばかりだったのを尋ねたのも、また大した理由などなかった。
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