呼び捨ての話 ちょっとした悪戯心と好奇心だった。いつもはくん付けで呼んでいるからそれを外してみたらどういう反応をしてくれるだろうかと不意に思って、二人きりになったタイミングで試してみようと一人で考えていた。そして丁度そのタイミングが訪れた。
「ねえ……アーサー。」
少しだけどきどきしながら呼び捨てにしてみた。どんな反応をするかなと思って、ちらりと彼の反応を窺うと彼は大きな目を見開いてこちらを凝視していた。
「……!?!?!?」
「……あれ、ねえ、アーサーくん?ちょっと?」
「……え。」
「アーサーくん大丈夫?」
「……えっ?」
単語だけ発して固まっている彼の顔の前で手を振る。それに反応がなくて、あまりに反応のなさにじわじわと笑いが込み上げてきた。彼の背中をとんとんと叩きながら笑う。
1984