霞 物心ついたときからずっとガキ大将をやっていて、力しか能のない自分が厄介事に巻き込まれるようになるのは必然だった。
体がデカけりゃそれだけで目につくし、親譲りの目つきの悪さはいくらでも誤解される。初めこそ勝手に向かってくる相手がなすすべもなく伸されて帰ってくのを面白くも感じたけれど、最近はもう、飽き飽きしていた。自分から吹っ掛けるのをやめたからといって、暴力の連鎖は簡単には止まらない。こんな日が、いつまで続くというんだろう。
「あイテっ」
横腹に拳が入った感覚がして、今がその暴力のさなかにいることを思い出した。口には出したものの痛みはそう大きくなく、拳の主がニタニタと粘つくような笑いを浮かべているのがムカついて殴り返すと、そいつは横っ飛びに倒れ込んだ。筋肉のつき方がそもそもコイツと俺じゃ違うんだ。黙ってやられるのも、無駄に痛いのも嫌だったから鍛えた体だけれど、達成したい目標はもう失っている。ただ、やることも、やりたいこともないから、惰性で続けているだけだ。……この、ケンカと同じく。
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