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    青井トマト

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    らくがき短文かべうち用の畑
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    青井トマト

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    ルカがバンビと最低限しか関わらず、パラ萌もしなかった世界線の話

    ##カプ無

    無題の三年間 あの春の日、アイツを教会で見つけたとき、俺はあのときの女の子だとひと目でわかった。向こうがわからなかったのは、俺の見た目が変わってしまったからだと思っていた。
     けれどそれは違って、彼女には俺との思い出なんて、たくさんある記憶の中のひとつでしかなかったんだ。

     俺たちのことを思い出しはしたアイツのことを、一度だけWest Beachに呼んだこともある。「住んじゃえよ」とも、本心のような冗談のような気持ちで言った。その言葉は戸惑った表情をされたあと軽くスルーされて、それ以降彼女がうちに来ることはなかったけれど。

     しばらくして知ったのは、アイツは俺たちよりもずっとずっと興味がある存在がいるらしいということだった。同級生か先輩か後輩か、それが誰なのかはわからないし、俺も深い興味はなかった。
     彼女と俺の間には、違う時間が流れてる。アイツはもう俺の知っている、俺たちのあとをチョロチョロついてきた思い出深い女の子じゃなくて、俺たちと別の時間を過ごしてきた、「ほとんど知らない女の子」だ。当然と言えば当然だけど、なんだか、受け入れるのには時間がかかった。

     校内でも、帰り道でも、休日も、アイツとはほとんどすれ違わなかった。偶然なのか、意図していたのかは、わからない。けれど、過ごし方がどうであろうと、月日は経っていく。
     期末テストで学年一位を取ったとか、ローズクイーンになったとか、そういう噂は聞いた。噂でしか聞かないくらいには、俺はアイツのことを避けていた。避けられているのなら避けるのが筋だろうと思ってそうしたのか、避けられているのに耐えられなくて避けたのかは、もうそのころになったらわからなかった。

     三年の一月はじめ、ヨタ高のやつらにいつものように絡まれてケンカした。それは何かデカい出来事だったわけじゃないのに、終わったあと、「あぁ、俺っていつまでも変われないんだ」という諦めみたいのが急に湧いて、悔しいような悲しいような、湿っぽい気持ちでいっぱいになってしまった。
     はば学に入って、確かに少しは変われたかもしれない。けれど、大きく変われたってこともない。アイツがいなくなってからと同じ無色の毎日を、平凡に過ごしてきただけだ。三年という月日は、無駄に長くて、そしてあっという間だった。

     West Beachはそのうち取り壊されるらしい。俺のモラトリアムは、間もなく終わる。
     コウはなんだかんだ仕事を始めるだろうし、俺も何とかしようという気持ちはある。けれど、将来のことは何も想像がつかなかった。

     キラキラした思い出の中の彼女は、俺とは違う、キラキラした世界で今も笑ってるんだろうか?
     もしも、彼女が俺と深く関わっていたら、何か変わっていたんだろうか?
     想像しようとして、やめた。
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