夜を共に大きな館の縁側で、今日の稽古を終えた小さな鬼切が、ふかふかの赤雪犬を抱きしめながら、心の中で思い巡らせていた。
海国との戦いで折れた刀身が再鋳造されてから数週間経った。鋳造当初の鬼切の調子は不安定で波があったが、今ではだいぶ安定し、鍛錬も昔のようなペースで行えるようになってきていた。
源氏に忠誠を誓っていたあの頃と変わらず、源頼光は自分をこの屋敷に置いてくれている。ここでは襲ってくる妖怪たちを眠気を堪えながら警戒する必要もないし、雨や寒さに、飢えや乾きに困ることもない。
しかし、以前と異なるのは、頼光が自分に仕事を頼まないという点だ。自分はもはや頼光の部下ではないので、当然ではある。
折れたせいで身体が子供のように小さくなってしまったが、鬼切は子供ではない。衣食住分くらいは、源氏の抱えている仕事を手伝ってやるべきだろうという思いで、最近、鬼切の心は落ち着かない。
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