君に吹く風、心の温度。荒涼とした土地に、風が吹いてゆく。
小石の混じった土埃が、風と共に舞い上がった。
「寒っ!!」
君に吹く風、心の温度。
ここは、月の渓谷。
吹く度に体温を奪われる冷たい風に、おもわず鳥肌が立った。
「こういう時に、スコールのような服装だったらな~。寒いのだって平気なのに」
自分が装備してるのは、肌の露出が多い旅人用の服――軽装である。
やはりあたたかい服が欲しいところ。だが望んだからって与えられるわけでもないので、いまは我慢するしかない。
それに、そんなことを嘆いている暇はないのだ。
おれは、ある人を捜している。
そのひとは、肩と胸元の大きく開いた、ベアトップのスカートを着用していた。
まぎれもなく軽装であり、置かれている状況も自分と同じはずだ。
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