ももも欠乏症。「申し訳ありませんが、うちの店では取り扱ってございません」
「そうか、邪魔したな」
そう言うとジェットは重い足取りで、入り口へと続く階段を上がっていった。
ももも欠乏症。
ここはティティーツイスター。荒野を行き交う渡り鳥たちの情報の集まる街だが、犯罪者も多い。
そんな街の裏通りを、仏頂面のジェットは歩いている。内心とてつもなく機嫌が悪く、苛ついていた。
(腹減った……)
本当はそんなに空いてもいないのだが、今はなぜかその単語しか思い浮かばないらしい。
ここ最近彼はある物を食していない。それは先ほどの店での会話のこと―――
『ここにネクタール……白桃の缶づめはおいてあるか?』
桃である。
自他ともに認める桃缶好き(白桃限定)のジェットは、かれこれ一ヶ月近く好物の桃を食べていない。
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