桜の下で、君と 帰りにどこかに寄りたい、と[[rb:海琴 > みこと]]が言い出したのは、俺が高等学校を卒業する一週間前だった。
海琴に拾われてから、何年経っただろう。俺よりも背が伸びて、けれど顔立ちは小さい頃の海琴のままで、かわいい。恋人として付き合い始めてから日が浅い俺たちだったが、それ以上に家族としての付き合いの方が長い。海琴に拾ってもらった恩もあるし、普段二人きりで放課後を過ごさないことも手伝って、俺は二つ返事で了承した。
「[[rb:史斗 > ふみと]]、今日は用事ないの?」
「ん、大丈夫。ほら、どこに行く? 春になったし、あそこの公園の桜も咲いてるかもな」
何気なく俺が言うと、海琴はぱあっと表情を明るくさせる。やっぱり、花が好きらしい。
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